The Plan①

イギリスの国家的食料戦略 National Food Strategy

ここがポイント The Plan

  • 有識者による公的な食に関する調査報告書
  • 食生活を改善することでアレルギー、肥満などの健康問題の解決
  • 誰もがアクセスできる手頃な価格の食
  • 環境に対応した食

イギリスの国家的食料戦略 National Food Strategy 2021年7月発行

夜遅く友人宅に到着すると、友人がチップスショップに連れて行ってくれた。ソーセージやフィッシュパイ、揚げたてのフライドポテトがホットキャビネットに並ぶ。5ポンドもあれば食べきれないほどの温かいたくさんの食べ物が手渡される。アツアツの食べ物は満たされた気分になる。

イギリスでは、このようなスナックのような食べ物を売るお店がたくさんあり、食いっぱぐれることはない。だが、最近ではイギリス人の2-10歳の子供のの1/3が肥満という結果が出ている。(注1)

油っぽい、カロリーが多い、砂糖が多いのが肥満の最大原因と言われ続けていたが、最近の調査ではどうも超加工品が肥満を引き起こしているのではないか?との調査や論文が出ている。

調べていくと一つの要因がひとつを引き起こす、そんな単純な話ではなく、環境や気候変動、人権と動物福祉、経済生産性、食品安全と公衆衛生と多岐に渡って問題となっている。フードシステムは非常に緊密に私たちの生活に織り混ざり、影響を及ぼす。

政府も動いていないわけではない。貧困層が健康的な食生活に一番影響を受けていることを受けて、フードプログラム(HAF)として2億2万ポンドを支出しているし、貧困層を助ける国の対策としてヘルシースタートヴァウチャーを週に2回支給し、さらに英国のスーパーマーケットはその金額に上乗せして商品が購入できるようにしている。

今の政策だけでは、まだまだ問題が解決されない。そこで、環境食料農村地域省が委任して、作成された【The Plan】(注2) 国家的食料戦略が公表された。学校給食にも言及しているので要約してみたい。

オーガニックフードなどを扱うチェーン店レオンの共同創設者ヘンリー・ディンブルビー氏をはじめ有識者による調査報告書である。FOOD Strategyとして、イギリスの人々が望んで必要としているフードシステムを作成することを目的に作成され、英国政府は6ヶ月以内に白書で回答するそうだ。

(注1)https://www.gov.uk/government/publications/childhood-obesity-a-plan-for-action/childhood-obesity-a-plan-for-action#fn:3

(注2)https://www.nationalfoodstrategy.org/wp-content/uploads/2021/07/National-Food-Strategy-The-Plan-1.pdf

https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/936238/The_School_Food_Plan.pdf





英国政府の現在の食品政策

英国政府は、誰もが安価で健康的な食生活を送ることを目標にフード・プログラムとしていくつかの政策を実行している。

  • 清涼飲料ドリンクへの課税
  • 砂糖税の導入
  • 企業は2020年までに製品全体の砂糖の漁を20%削減する(糖度を下げる、砂糖の分量をへらす、低糖の代替品にシフトする)
  • 企業がより健康的な製品を開発することに力を入れる
  • 10年前に作
  • られた栄養ファイルの刷新
  • 公共機関(病院やレジャーセンターなど)をより健康的な食環境を作る
  • 低所得の家族にビタミンフルーツ、野菜、ミルクと交換できる食券の発行
  • 子供のスポーツやアクテビティの補助
  • 小学校のより良い食事と運動を支援する
  • 学校給食をより健康にする
  • 食品表示をより明確にする
  • 健康基準を満たす食のガイドライン作成
  • 助産師やヘルプビジターなど医療専門家が家族の健康を支援

2013年、2015年と段階的に学校給食基準を改定、新たに砂糖と栄養に関する事項を加筆、公立校だけではなくフリースクールやアカデミーなどでも適用するようにする

朝食クラブの設立の補助をし、集中力の工場や行動の改善をする

今必要とされている政策は?

漁業の問題

イギリスの国民食【フィッシュアンドチップス】の主材料、タラは1970年から40年の間に87%減少している。また、海洋生物多様性は49%減少していると考えられている。

底引網とブルーカーボンによる影響とみられていて、対策が必要とされている、

アレルギー

アレルギーによる子供の入院が338%と増えており、子供の5-8%はアレルギーと言われている。環境、遺伝、腸内細菌などが関連していると考えられる。

2021年10月からテイクアウトも含めて食品すべてに材料表示を必要とする法律が施行(購入品を使用する場合、そのすべての材料を表示する)ゴマ入りのサンドイッチを知らずに食べてアナキラシーショックで亡くなったナターシャにちなみ、ナターシャ法と名付けられた。

炭素

2039年までに1990年の使用量よりも78%の生産減少を世界的に発表したが、輸入は可となっている。

これは、環境被害をアウトソーシングすることになりかねない、生物多様性の喪失につながる、熱帯雨林の破壊に繋がるとしている

食の生産消費

生産だけではなく、消費の環境被害を測定する

集約農業と食習慣が起こす負のサイクル

集約農業

集約農業により、78億人を養うのに十分なカロリーを作ることに成功したが、農業はエネルギー産業の次に気候変動に関わっている。

集約農業による環境破壊により気候変動が起こり、気候災害により収穫ができないといった負のサイクルができてしまっている。

英国の農業はGDP1%だが、温室効果ガスを全体の10%起こしている

加工食品

食品が工業化された恩恵は大きい。だが、安価で購入できる加工食品の80%は不健康である。更には、人気があり安価である。

最近の研究では、超加工食品は、ホルモンの働きにより、満腹になるのが遅いという結果が出ている。現在は、こういった加工食品により多くの投資がされている。

超加工品はカロリーあたりにして3倍安価で購入できる。貧困層のジャンクフードサイクルが語られ、貧困層の子どもたちがより肥満が多いことが問題になっている。

英国の10人に3人が肥満である。

コロナの死亡者は2021年12月現在で14.6万人(日本は1.8万人)コロナ死亡者の危険因子の4つは食に関連している。

畜産産業

現在の二酸化炭素排出量を目標値に達成するには、肉の消費量を20-50%削減しないといけない

自国だけではなく、輸入も含め、生産と消費の面から改善しないといけない。